国内製造は1社のみとなってしまった『西の線香花火』は気温が低く空気が乾燥した冬にしか
製造ができません。
持ち手の先についた黒い部分(火薬)に膠(天然の動物性の糊)が使われており、
製造過程でその火薬を速乾させるためです。
12月から翌年3月くらいまでが製造の最盛期となります。
モノを作っている人が少ないということは、その原料を作っている人も少ないということで
原料集めにはいつもとても苦労しています。
持ち手に部分は稲わらの芯ですが、これも昔は蚕用のほうきとして穂先を輸入して造っていた
業者さんより、穂先下の節から節の間を譲ってもらい花火に利用していたのですが
現在は養蚕業者も少なくなり箒の需要も減ってしまい、数年前よりわらを譲ってもらえない状況となってしまっていました。
その頃からわらのことを学び花火に使えそうな米の品種を探したり、干し方、抜き方いろいろな研究を
していました。
『西の線香花火 スボ手牡丹』は線香花火の原型で300年続く歴史のある花火です。
「うちが辞めてしまえば300年の歴史を途絶えさせることになる!絶対に守らなければ。」と
いう想いとたくさんの人たちの協力によりでやっと原料集めまで自分たちの手でやり始めることができました。
米もコンバインで刈る時代。ほとんどが短くカットされ田んぼの中に漉き込まれているのですが
地元の農家の方におねがいして長くカットしてもらい、立てて数日間田の中で乾燥させ、こんどは1年間かけて
その中から芯を抜き出すという地道な作業から始めています。
芯を抜く作業は老人ホームや障害者支援センターの方々の手で大事におこなわれています。
こうして出来上がるスボ手牡丹は関西地方で主流の線香花火ですが
ほとんで流通していないため今では希少な存在となっています。
遊び方も紙のタイプの長手牡丹と違い斜め上を向けて遊びます。
“風があった方がきれいに咲く”という線香花火の常識を覆す西の線香花火は
てまひまかかった線香花火なのです。
空気が澄んだ冬の夜に是非お楽しみください。